研究拠点
【 高さ458m地点 】
■雲粒観測(防災科学技術研究所)
高さ458m地点にて2016年6月から2022年12月の期間で雲を構成する雲粒の大きさや個数の観測を実施しました。
通常、飛行機などでしか観測が難しい雲内の状況を東京スカイツリーの高さを活かして観測することによって、得られたデータをゲリラ豪雨の早期検出のための雲レーダー開発に活用しています。
■エアロゾル観測(国立極地研究所・広島大学ほか)
高さ458m地点で捕集した大気中の微粒子(エアロゾル)から、主に雲粒の核になる粒子(雲粒凝結核)や雲粒を凍結させる性質をもつ粒子(氷晶核)の分析を目的に観測していました。
458m地点に設置していた雲粒やエアロゾル粒子を観測する機器
(撮影:防災科学技術研究所)
東京スカイツリーで雲粒やエアロゾル粒子を観測する意義には、以下の3つがあります。
人間活動によって放出されるエアロゾル粒子は、水蒸気が凝結して雲粒ができるときの核(雲凝結核)になるため、ゲリラ豪雨を強める可能性が指摘されています。東京のように人間活動の活発な場所では、エアロゾル粒子の数が非常に多いので、小さな雲粒がたくさん形成され、それが積乱雲によって上空まで運ばれて凍結し、激しい雨をもたらすと考えられています。東京スカイツリーでの観測を通して、東京上空に雲凝結核や氷晶核がどの程度存在するかを明らかにし、人間活動がゲリラ豪雨に及ぼす影響を解明するための基礎データの取得を行いました。
雲は太陽放射を反射するとともに、地面からの赤外線を吸収するので、地球を冷やす効果と暖める効果の両方をもっています。雲が太陽放射をどの程度反射するかは、雲粒の大きさや個数に依存しています。東京スカイツリーでの観測を通して、その実態や季節変化を明らかにし、気候変動予測モデルの検証に役立てていきたいと考えています。
現在、宇宙から雲を観測するため、雲レーダ(雲粒を観測するレーダ)を搭載した地球観測衛星の打ち上げが計画されています。また防災科学技術研究所では、積乱雲を早期に検出するための雲レーダの試験運用を行いました。 雲レーダによる観測にはグランドトゥルース(比較検証のためのデータ)が必要になるため、東京スカイツリーで取得された雲やエアロゾルのデータの活用が期待されています。
装置を説明する三隅様(2017年当時)
雲の中に入って観測することは、気象研究者の私にとって長年の夢でした。東京スカイツリーのおかげで、自ら雲の中で観測することができて、とても幸せです。今まで得られなかったたくさんのデータを得ることができ、うれしい悲鳴を上げながら解析をしています。
(日本大学 文理学部 三隅良平教授、防災科学技術研究所 客員研究員)