構造設計

634mを支える技術

634mもの巨大な塔を、
どうやって安全に支えているのか。

東京スカイツリーは、最先端技術と日本の知恵が融合した世界唯一の建造物。
その高さと安全性を実現した構造設計の工夫を、わかりやすくご紹介します。

東京スカイツリーの足元にある巨大な鋼管柱と鉄骨構造を間近から見上げた様子

東京スカイツリーの構造設計について、部分別にご紹介

STRUCTURAL
DESIGN?

まずは未知領域の
リサーチからスタート

調査

東京スカイツリーの高さは約634m。
東京スカイツリーの建設地が墨田区押上地区に決定した2006年当時、日本で最も高い建造物は1958年に完成した東京タワー(設計:日建設計)で約333m。
約50年を経て、一気に倍近くの、これまでになかった高さに挑むわけですから、最先端技術を駆使した「未知の領域への挑戦」といえます。
その安全性を確保するために、まずはその未知領域のリサーチから始めました。

東京スカイツリーの全体図と高さ「634m」を示したビジュアル

600m上空の風を知る

屋上で白い球体状の気球を機材に取り付け、放球準備をする作業員の様子

青空の上空に浮かぶ気球を示し、「気球」と表示されたビジュアル

600m上空にはどんな風が吹いているのかを調べるため、ラジオゾンデという気象観測気球を飛ばして、高層での風速分布や風の乱れを調べました。 また、通常の地盤調査に加えて、通常は行わない調査方法(微動アレイ調査)で地下3km程度までの深い地層構造を調べることにより、地震時にこの場所がどのように揺れるのかをより正確にシミュレーションしています。

これら緻密な調査からさまざまな設計の工夫やその検証を経て、通常の超高層建築物の設計では想定しない地震や暴風に対しても安全性を確認しています。

大樹のような、
地盤とのつながり方

地盤

建物は、高くなるほど地震や強風時の揺れによって、基礎部分に大きな「引き抜き力」「押し込み力」がかかります。
このタワーのように細長い場合には、特に大きな力がかかります。
地盤の設計でこの難題を解決する必要がありました。

青空と雲を背景に下から見上げた東京スカイツリー

まるで
「スパイクシューズの靴底」の壁杭
東京スカイツリーの基礎構造図。連続地中壁杭(鉄筋コンクリート造)GL-35m、節付き連続地中壁杭(鉄骨鉄筋コンクリート造)GL-50mの説明図
(提供:日建設計)

そこで、基礎の杭を、節の付いた壁状のものにすることで摩擦抵抗を大きくして、これに抵抗しています。この節は、いわば「スパイクシューズの靴底」のようなものです。また、この壁杭を連続させ、放射状に地中に張り巡らせることで、「木の根」のように地盤と一体化することを意図しています。

また、地上に見えるタワーの鉄骨は、そのまま地下の杭に連続的に接続し、力をダイレクトに伝達しています。これを逆にいえば、「大地から生えてきた大樹のように建っている」ともいえるでしょう。

東京スカイツリーの足元に並ぶ巨大な鋼管柱と内部空間の様子

つないで一体化する
鉄骨の工夫

塔体
タワーを支える
高強度な鋼材のヒミツ
建設中の東京スカイツリー基部で作業を行う工事関係者の様子
2009年4月6日撮影、地上部最初の塔体鉄骨の様子。この鉄骨は高さ約4m、直径2.3m、厚さ10cm、重さは約29t。

部材として「高強度鋼管」という、標準的な鉄骨よりも約2倍強い鉄を使用しています。
タワー足元の鋼管は、直径2.3m、厚さ10cmという巨大なものです。

分岐継手のイメージ図
分岐継手の概要図(提供:日建設計)

塔体の構造は「トラス構造」という、主材、水平材、斜材からなる各部材を三角形状に接合していった構造体骨組みです。各部材の接合は、「分岐継手」と呼ばれる、鋼管同士を、プレートなどを介することなく直接、溶接接合する方法としています。これは、見た目にもシンプルで、防錆性能上もメリットが得られます。

鉄骨造塔体の概要
スカイツリーのトラス構造説明図。状態:リング時、状態:水平連結時、リングトラス・リフトトラス・軸トラス・外周・中層・内層などの構成を示した図解
鉄骨造塔体の概要図(提供:日建設計)
鉄骨造塔体の鼎(かなえ)トラス、水平連結トラス、リングトラスについて
鼎(かなえ)トラス 4本の柱と水平材・ブレース材からなる組柱。三角形の平面形の各頂点位置に配置している。
水平荷重に抵抗する主要架構となる。
水平連結トラス 中塔-リングトラスを2層毎(25m)に連結する柱。水平力(面内)の伝達部材及び、鼎トラス・外周柱の座屈補剛材として働く。
リングトラス 1層毎(12.5m)に配置する水平材。外周柱の座屈補剛材として働く。

建物の揺れを抑える
新しい仕組み
心柱制振システム

制振

地震や強風時の揺れに対し、いかに安心・安全な建物とするかさまざまに試みた結果、中央部に設けた鉄筋コンクリート造の円筒(=心柱)と外周部の鉄骨造の塔体を構造的に分離し、中央部の心柱上部を「重り」として機能させた、新しい制振システムを用いています。

とうきょうスカイツリーの心柱の側面写真

原理としては「質量付加機構」という現代の制振技術を応用したもので、大地震時に40%程度の応答せん断力を低減することができます。一方、日本の伝統的な塔である「五重塔*」は、これまでに地震による倒壊例がなく、その秘密は、同じく建物中央の柱=心柱にあると推察されています。
この古人の知恵に深く敬意を表し、五重塔になぞらえて、「心柱制振」と名付けました。

  • 「五重塔」は日本独自の木造建築物です。台風や火事による倒壊はあるものの、地震による倒壊の記録は残っておらず、耐震性に優れた建物といわれています。高い耐震性の理由にはさまざまな説がありますが、中央部に建てた柱「心柱」が大きな役割を果たしていると考えられています。
質量付加機構

地震時などに、建造物本体とタイミングがずれて振動する付加質量(=重り)を加えることで、本体と重りの揺れを相殺させて、建造物全体の揺れを抑制する制振システムです。付加質量には、通常、鋼塊やコンクリート塊が用いられますが、質量の大きい設備機器や畜熱槽等を質量に利用する例もあります。今回のように、心柱=階段室を付加質量に用いた例は世界初です。

付加質量(重り)による揺れの制御説明図。右への揺れ・左への揺れ、建造物全体で揺れが相殺される仕組みを示す図解
質量付加機構の概要図
東京スカイツリーの心柱

東京スカイツリーにおいては、中央部に建てられる円筒部(鉄筋コンクリート造、内部は非常階段)を指します。五重塔に関する古人の知恵に深く敬意を表し、心柱と名付けました。

東京スカイツリーの心柱説明図。H=375m、H=125mの位置表示と、可動域・固定域、心柱と鉄骨造塔体をオイルダンパーで接続する構造、および可動域心柱の平面図(オイルダンパー、心柱:鉄筋コンクリート円筒)
心柱解説図(提供:日建設計)

コンテンツ提供

株式会社 日建設計
「東京スカイツリー設計
プロジェクト」

東京スカイツリーの設計に携わった日建設計によるスペシャルコンテンツ。
実際に使用されている構造技術やプロジェクトに参加した設計者たちの声など、東京スカイツリーを構造設計からアプローチしたコンテンツをご覧いただけます。

夜景の東京スカイツリーを中心に広がる都市景観